オーダースーツ店のkintone導入事例|紙と記憶に頼っていた「顧客の思い出」をデータ資産に変え、他店との差別化を実現した事例
まず聞かせてください。こんな状況、心当たりありませんか?
- 数年前に来店されたお客様が久しぶりに来店したとき、過去の採寸データを探すのに時間がかかる
- 顧客の基本情報・採寸データ・制作指示書・請求金額がバラバラの紙に書かれており、一人の顧客の情報をまとめて確認できない
- 「以前と同じデザインで」と言われても、前回の指示書がすぐに出てこない
- スタッフが変わると、前任者が把握していた顧客の好みや要望が引き継がれない
- お客様一人ひとりに積み重ねてきた接客の記録が、どこにも残っていない
もしひとつでも「あるある」と感じたなら、この記事はあなたのために書きました。
オーダースーツ店のkintone導入事例——M代表(30代)の場合
M代表は、オーダースーツ店を経営する30代の代表取締役です。スタッフは5名程度。就職・昇進・結婚など人生の節目に合わせてスーツをオーダーされるお客様を中心に、丁寧な採寸と接客で信頼を積み重ねてきました。
導入以前、店舗の管理はすべて紙とホワイトボードに頼っていました。顧客の基本情報・採寸データ・スーツの指示書・今月の請求金額——これらがそれぞれ別の紙に記録され、ホワイトボードで進捗を管理するスタイルが長年続いていました。
困ることが最も多かったのは、久しぶりに来店されるお客様への対応でした。
「毎年オーダーしてくれるお客様はまだいい。数年ぶりに来てくださった方のデータを探すのが大変で。棚の中をひっくり返しながら『少しお待ちください』と言い続けるのが、申し訳なかった」
過去の採寸データが出てこなければ、また最初から採寸し直すことになります。しかしオーダースーツのお客様にとって、「前回と同じ採寸で」「前回気になっていた肩の部分を今回は直して」という過去の履歴を踏まえた対応こそが、オーダーならではの価値です。紙の管理では、その価値を十分に提供できていませんでした。
また、スーツの制作指示書は工場によって仕様が異なるため、複雑な書式を紙に手書きするスタイルが続いていました。これをそのままデジタル化するのは現実的ではありません。
こうした課題を抱えるM代表の店舗に、私たちはkintoneの導入支援を行いました。
オーダースーツ店の「紙管理の限界」——なぜ顧客情報が資産にならないのか
紙での顧客管理が持つ最大の問題は、「情報が人の記憶と物理的な紙に分散している」ことです。
担当スタッフが覚えていれば対応できる。棚に紙が残っていれば探せる。この前提が崩れたとき——スタッフが変わったとき、紙が見つからないとき、数年のブランクがあったとき——お客様への対応品質は一気に下がります。
オーダースーツという業態は、リピート率と顧客との長期的な関係が収益の根幹です。毎回「初めてのお客様」として対応するのではなく、「この方はいつも何を大切にしているか」「前回どんな話をしたか」を踏まえた接客が、安価な既製服との本質的な差別化になります。
顧客情報を紙に残すだけでは、それは「保管されている書類」に過ぎません。いつでもどこでも引き出せる状態になったとき、初めて「資産」になります。
そもそもkintoneとは?オーダースーツ・パーソナルサービス業との相性がいい理由
kintoneは、サイボウズ社が提供する業務アプリ作成ツールです。プログラミングなしで、自社の業務に合わせた管理画面を作れます。
オーダースーツ・パーソナルサービス業との相性が特によい理由は2つあります。
ひとつは「顧客ごとに蓄積した情報を瞬時に引き出せること」。氏名で検索するだけで、その顧客の過去の採寸データ・制作履歴・接客メモ・請求履歴が1画面に集約されます。数年ぶりのご来店でも、前回の会話を覚えているかのような接客が実現します。
もうひとつは「紙の書類を写真で取り込んで案件に紐づけられること」。工場ごとに異なる複雑な指示書は紙に記入したまま、その写真をkintoneの制作管理レコードに添付することができます。「指示書はExcelで再現できないから紙のまま」という現実を受け入れながら、検索・管理はkintoneで行うという適材適所の設計が可能です。
オーダースーツ店のkintone——紙とホワイトボード管理との違いはここ
| 比較項目 | 紙・ホワイトボード管理 | kintone導入後 |
| 過去の採寸データの検索 | × 棚を探す・見つからない | ◎ 氏名検索で即座に表示 |
| 顧客情報の一元管理 | × 複数の紙に分散 | ◎ 顧客1レコードに全情報集約 |
| 制作指示書の管理 | × 紙の束・紛失リスク | ◎ 写真で撮影し制作管理に保管 |
| 制作進捗の確認 | × ホワイトボードを見に行く | ◎ kintoneで随時確認可能 |
| スタッフ間の顧客情報共有 | × 担当者の記憶に頼る | ◎ 全スタッフがデータで把握 |
| 顧客との関係の蓄積 | × 消えていく・忘れられる | ◎ 接客の思い出がデータ資産に |
紙に書かれた情報は「保管物」です。kintoneに入った情報は「いつでも引き出せる資産」になります。この違いが、お客様への接客品質を変えます。
プロが設計した「3つの解決策」
1. 顧客管理アプリ——採寸データと接客の記憶を、永続するデータに変える
kintone導入の最初のアプリは、顧客管理と制作管理のシンプルな2本でした。スモールスタートの原則通り、まず「使われる状態」を作ることを最優先にした設計です。
顧客管理アプリには、氏名・連絡先などの基本情報に加え、採寸データ(肩幅・胸囲・ウエスト・裾丈など)と接客メモを登録できる設計にしました。接客メモは「今日こういうご要望だった」「就職祝いで親御さんと来店された」「ネイビーより濃いめのグレーが好み」といった、紙に書かなければ消えていくような情報を気軽に記録できる場所です。
顧客名で検索するだけで、過去のすべての採寸データと接客履歴が1画面に表示されます。数年ぶりのご来店でも、スタッフが変わっていても、「先回はこちらのご要望でしたね」という会話が自然にできるようになります。
「過去の採寸データをすぐにデータで引っ張り出せるのは、本当に楽になった。お客様をお待たせすることなく、すぐに前回の情報を確認して話を始められる」
2. 制作管理アプリ——指示書は紙のまま、管理はkintoneで
スーツの制作指示書は、工場ごとに仕様が異なる複雑な書式です。これをkintoneの入力フォームで再現することは現実的ではありません。今回はこの現実を正面から受け入れ、「指示書は紙に記入する、その紙を写真で撮影してkintoneの制作管理レコードに保管する」というアプローチを取りました。
制作管理アプリには、注文日・納期・担当工場・進捗ステータスに加え、撮影した指示書の写真を添付できる設計にしています。ホワイトボードで管理していた製作進捗も、kintoneのステータス管理に移行することで、どのスーツが今どの工程にあるかが一目で確認できるようになりました。
指示書を探して棚をひっくり返す作業は、今はありません。顧客名か注文番号で検索すれば、写真になった指示書がすぐに画面に現れます。
3. 顧客情報を「資産」として積み上げる設計——他店との差別化の根拠を作る
この設計で最も重要な考え方は「接客のたびに情報が蓄積される」という仕組みを作ることです。
採寸データだけでなく、「その日どんな話をしたか」「どんな場面で着るスーツを作ったか」「お客様がこだわっていたディテールは何か」——こうした情報を接客後に短くメモするだけで、その顧客との関係の履歴がkintoneに積み上がっていきます。
1回の来店では小さな記録でも、3年・5年・10年と積み重なったとき、それはその顧客との「関係の記録」になります。安価なスーツが簡単に手に入る時代に、オーダースーツを選んでもらえる理由——それはこの積み重ねの中にあります。
「安価なスーツが簡単に手に入る世の中で、顧客情報は資産になると感じた。あの時こういう思いでスーツを作ってくれたな、こんな話をしたな。すべての思い出が記録データとして保管されていてありがたい。他店舗との差別化になっていると思う」

kintone導入で変わった「3つのこと」
1. 「お待たせする時間」がなくなった
過去の採寸データを探して棚をひっくり返す時間が、検索一発でゼロになりました。数年ぶりにご来店されたお客様に対して、スムーズに前回の情報を確認しながら話を始められるようになりました。この「待たせない接客」は、お客様への印象を大きく変えます。
2. スタッフが変わっても、顧客への接客品質が落ちなくなった
担当スタッフの記憶に依存していた顧客情報が、kintoneに蓄積されることで「店舗の資産」になりました。スタッフが変わっても、新しいスタッフがkintoneを確認すれば、その顧客との歴史を踏まえた接客ができます。「担当が変わったら前の情報がなくなった」という顧客体験のギャップが解消されます。
3. 顧客との「関係の深さ」が可視化された
接客のたびにメモが積み重なることで、「この顧客とはどんな関係を築いてきたか」が1画面で振り返れるようになりました。次の来店に備えて「前回こんな話をしていたから、今回はこの話題が喜ばれるかも」という準備ができます。これはデータが多い大手チェーンには真似できない、小規模店舗ならではの強みです。

M代表の場合、導入後こう変わった
導入から半年後、M代表はこう振り返ります。
「kintoneを入れる前は、お客様の情報は紙か自分の頭の中にしかなかった。今はその情報が全部データになって、いつでも取り出せる。顧客情報って、積み重ねれば積み重ねるほど価値が上がるんだと実感している」
来店頻度が上がったという変化も感じているといいます。
「久しぶりに来てくださったお客様に、前回の話を自然にできると、お客様がすごく嬉しそうにしてくださる。『覚えていてくれたんですね』って。覚えているんじゃなくて、データに入っているんですけど——でもその感動は本物だと思う」
こんなオーダー・パーソナルサービス業に特におすすめです
✔ リピーターが多く、過去の来店履歴・施術データ・お客様の好みを蓄積して接客に活かしたい
顧客ごとに蓄積したデータをkintoneで管理することで、何年ぶりの来店でも「覚えている」接客が実現します。顧客情報は積み重ねるほど価値が高まります。
✔ 採寸データ・施術記録・制作指示書など、顧客ごとに管理すべき情報が多く、紙での管理に限界を感じている
顧客管理アプリに採寸データと接客履歴を集約することで、「この顧客についての情報はここを見ればすべてわかる」という状態が生まれます。
✔ 工場や外部業者ごとに異なる指示書・仕様書があり、kintoneで完全にデジタル化するのは難しいと感じている
指示書は紙のまま写真で取り込んでkintoneに保管するアプローチが最適解です。「全部デジタル化しなければ意味がない」という思い込みを手放すことが、導入成功の第一歩です。
✔ スタッフが変わるたびに顧客情報の引き継ぎに困っており、属人化した顧客関係を解消したい
kintoneに顧客情報が蓄積されることで、スタッフが変わっても接客品質が落ちない体制を作れます。「店舗の顧客」として情報が管理されるようになります。
✔ 安価な競合との差別化に悩んでおり、自分たちの強みを磨く方向でDXを活用したい
顧客情報を資産として積み上げることが、価格競争に巻き込まれない差別化の根拠になります。「あなたのことを知っている店」というポジションは、データの蓄積なしには作れません。
オーダースーツ店のkintone導入の流れ
STEP 1:ヒアリング(現在の顧客管理の状態を整理) 現在どのような方法で顧客情報・採寸データ・制作指示書を管理しているかをお聞きします。紙の種類・ホワイトボードの使い方・スタッフ間の情報共有の実態を確認します。所要時間は1〜2時間程度。
STEP 2:設計(顧客管理・制作管理の2アプリをスモールスタートで設計) 最初は顧客管理アプリと制作管理アプリの2本から始めます。採寸データの項目設計・接客メモの入力しやすさ・指示書写真の添付方法を現場の使いやすさを最優先に設計します。
STEP 3:構築・テスト(実際の顧客データで動作確認) 既存の顧客データを入力しながら動作確認します。「この情報も入れたい」「この画面がわかりにくい」という声を反映して調整します。
STEP 4:運用開始・情報蓄積のサポート 日々の接客で情報を入力する習慣が定着するまでフォローします。蓄積された顧客データの活用方法についても継続的にアドバイスします。
「顧客情報」が最大の競争優位になる時代に
安価なスーツが簡単に手に入る時代に、なぜお客様がオーダースーツを選ぶのか。それは「自分のことをわかってくれる人に作ってもらいたい」という気持ちがあるからです。
採寸データは、その気持ちに応えるための最低限の情報です。しかし本当の差別化は、採寸データの先にあります。「あのときこんな思いでスーツを作ってくれた」「就職のときの緊張した顔が忘れられない」——そういう記録が積み重なったとき、その店はお客様にとって「特別な場所」になります。
kintoneはその特別さを作るための道具です。高級なシステムである必要はありません。接客のたびに少しずつ積み上げること——それがやがて、他の誰にも作れない顧客との関係になります。
まとめ
- 紙とホワイトボードに散らばっていた顧客情報・採寸データ・制作管理をkintoneで一元化することで、数年ぶりの来店でも瞬時に過去の情報を確認できる
- 制作指示書は工場ごとに異なる複雑な書式のため紙で記入し、写真でkintoneに保管するという「適材適所」の設計が最適解
- 接客メモを積み重ねることで、採寸データだけでなく「顧客との関係の記録」がデータ資産として蓄積される
- スタッフが変わっても顧客情報がkintoneに残ることで、接客品質の属人化を解消できる
- 「顧客情報を資産にする」という発想が、安価な競合との価格競争に巻き込まれない本質的な差別化につながる
- スモールスタートで顧客管理・制作管理の2アプリから始めることで、小規模店舗でも無理なく定着できる
オーダースーツ・テーラー・パーソナルサービス業のkintone導入に興味が出てきた方は、ぜひ一度ご相談ください。現在の顧客管理の状態をお聞きした上で、最適な設計をご提案します。まずは無料ヒアリングからどうぞ。
大阪府の補助金を活用してkintoneを導入しませんか?
kintoneの導入費用は、大阪府が実施する「令和8年度 利益率向上・賃上げ支援事業」の補助金を活用できる可能性があります。物価高騰の厳しい環境のなか、賃金引き上げに向けて利益率の向上に取り組む府内中小企業を幅広く支援する制度です。
補助金の概要
正式名称 令和8年度 利益率向上・賃上げ支援事業
補助金上限 500万円(補助率 2/3)
採択者数 600者程度
申請期間 2025年5月25日(月)〜 6月26日(金)17:00まで
対象者 大阪府内に本店または主たる事業所を有する中小企業者等(1年後に給与支給総額を2.0%以上引き上げることを目標とし、目標値を従業員に宣言した者)
kintone導入によるシステム構築費・開発費・専門家経費・外注費などは補助対象経費に含まれます。顧客管理の高度化・サービス品質向上を通じて利益率を高める取り組みとして、kintoneによる顧客情報の資産化はまさにこの補助金の趣旨に合致します。
採択者のうち100者には専門家による伴走支援(無料・約6か月)も実施されます。kintone導入後の定着・活用まで手厚くサポートを受けられる点も、この補助金の大きな魅力です。
【注意事項】
・本補助金は補助事業完了後の精算払いです。
・申請は事業者自身が行う必要があります(外部支援者による代理申請は不可)。
・他の補助金との重複受給は認められません。
・詳細は必ず募集要項をご確認ください。
補助金の活用も含めたkintone導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。申請締切(6月26日)が迫っておりますので、ご興味のある方はお早めにご連絡いただけますと幸いです。
