外装・床・シーリング工事業のkintone導入事例|「最初からすべてうまくいく予定で考えない」——スモールスタートで現場に定着させた段階的DXの事例
まず聞かせてください。こんな状況、心当たりありませんか?
- 昔に作った自社システムが今の業務スタイルに合わなくなり、Excelで補う運用が増えてきた
- システムとExcelが混在していて、どちらが最新かわからなくなることがある
- 担当者によって管理の仕方が違い、属人化した運用が横行している
- 現場の施工写真や報告が担当者のスマホやPCに散らばっており、本部からリアルタイムに確認できない
- 新しいシステムを入れたいが、ベテランスタッフへの定着が不安で踏み出せない
もしひとつでも「あるある」と感じたなら、この記事はあなたのために書きました。
外装・床・シーリング工事業のkintone導入事例——P担当者(40代)の場合
P担当者は、外装工事・床工事・シーリング工事を手がける建設会社の40代の管理部門担当者です。
会社にはかつて、社内のエンジニアが作り上げたフルスクラッチの自社システムがありました。当時の業務フローに合わせて丁寧に設計されたそのシステムは、長年にわたって現場と管理部門の橋渡しを担ってきました。しかし時代とともに業務スタイルは変化し、システムは少しずつ現実から乖離していきます。
「作った当時はよかったんです。でも業務が変わるたびに、システムが追いつかなくなっていった。気づいたらExcelで補う作業が増えていて、結局どっちが正しい情報かわからない状態になっていた」
システムに入っている情報とExcelの情報が別々に存在し、どちらが最新かを確認するためのやり取りが発生する。担当者ごとに管理の方法が違い、「あの件はどこで管理してるの?」という問い合わせが日常的に飛び交う。業務の属人化が静かに、しかし確実に進行していました。
「このままでは限界が来る」という課題感は共有されていましたが、もうひとつ大きなハードルがありました。社内には若手だけでなく、長年自分のやり方で仕事を進めてきたベテランスタッフも多い。新しいシステムを入れても、定着しなければ意味がない——その不安が、意思決定を慎重にさせていました。
「一番怖かったのは、入れたけど誰も使わなくなるパターン。それが一番コストがかかる失敗だと思っていた」
この担当者の会社に、私たちはkintoneの導入支援を行いました。
工事業の「システム老朽化の壁」——なぜ自社システムとExcelの混在が生まれるのか
フルスクラッチの自社システムを持つ会社が直面する問題は、「システムが悪い」のではなく「業務の変化にシステムが追いつけない」ことです。
自社システムは開発当時の業務フローに最適化されています。しかし建設・工事業では、工事の種類・顧客の要望・書類のフォーマット・現場報告の方法が少しずつ変化し続けます。その変化に合わせてシステムを改修するには費用と時間がかかり、気づけば「システムが対応していない部分はExcelで」という運用が定着してしまいます。
こうして生まれたシステム+Excelの混在管理は、情報の分散・属人化・引き継ぎの困難という三重苦を生み出します。誰かが辞めたとき、その人だけが管理していたExcelファイルが失われ、業務に穴が開く——こうしたリスクが静かに積み上がっていきます。
そもそもkintoneとは?外装・工事業との相性がいい理由
kintoneは、サイボウズ社が提供する業務アプリ作成ツールです。プログラミングなしで、自社の業務に合わせた管理画面を作れます。
外装・工事業との相性が特によい理由は2つあります。
ひとつは「スモールスタートで始めて、業務の変化に合わせて拡張できる柔軟性」。フルスクラッチ開発のように最初からすべてを設計する必要がなく、まず必要な部分だけを作って使い始め、現場の声を聞きながら少しずつ育てていくアプローチが取れます。
もうひとつは「外部サービスとの連携が容易なこと」。GoogleドライブやGoogleフォトと連携することで、現場で撮影した施工写真を案件と紐づけてリアルタイムに共有できます。現場と本部の情報ギャップを埋める手段として、工事業に特にフィットします。
外装・工事業のkintone——旧システム+Excel管理との違いはここ
| 比較項目 | 旧システム+Excel管理 | kintone導入後 |
| 情報の一元管理 | × システムとExcelで分散 | ◎ kintoneに一元集約 |
| 担当者ごとの管理方法 | × 属人化・人によってバラバラ | ◎ 入力フォームで標準化 |
| 施工写真の共有 | × 担当者のスマホ・PC内に散在 | ◎ Googleドライブと連携し即共有 |
| 現場と本部の情報共有 | × タイムラグが発生 | ◎ リアルタイムで本部が確認可能 |
| 原価・材料管理 | × Excel個別管理・集計に手間 | ◎ 案件と紐づけて一元管理 |
| ベテランスタッフの定着 | × 変化への抵抗感が大きい | ◎ スモールスタートで段階的に定着 |
旧システムとExcelの混在は「情報がどこにあるかわからない」状態を生み出します。kintoneは「情報が集まる場所をひとつにする」ことで、この問題を根本から解決します。
プロが設計した「段階的拡張の戦略」
P担当者の会社でのkintone導入が成功した最大の要因は、「最初からすべてを入れようとしなかった」ことです。導入の設計は、スモールスタートからの段階的拡張という明確な戦略のもとで進めました。
フェーズ1:スモールスタート——顧客・案件・日報の3本から始める
最初に構築したのは3つだけです。顧客管理アプリ・案件管理アプリ・日報管理アプリ。
顧客管理アプリには取引先の基本情報を登録し、案件管理アプリと紐づける設計にしました。案件管理アプリでは各工事案件の基本情報・工期・担当者・進捗ステータスを管理します。日報管理アプリはスタッフが毎日の作業内容・進捗・特記事項を入力する画面です。
シンプルに3本。入力項目も必要最小限に絞りました。「まずこれだけ使えるようになろう」というハードルの低さが、ベテランスタッフを含めた全社への定着を可能にしました。
「若手ばかりではないので、変化に順応していくためにあえてスモールスタートにした。それが正解だった。最初は簡単だから続けられて、続けることで少しずつ慣れていく。その積み重ねが定着につながった」
フェーズ2:拡張——原価管理・材料管理を追加
3本のアプリが現場に定着したタイミングで、管理領域を広げていきました。
原価管理アプリでは、案件ごとに発生する労務費・外注費・材料費・諸経費を入力し、予算との比較ができる設計にしました。案件管理アプリと連携することで、「この案件の今月の原価はいくらか」がリアルタイムで確認できます。
材料管理アプリでは、工事に使用する材料の発注・入荷・在庫状況を案件と紐づけて管理します。「この現場の材料、手配できているか?」という確認が、kintoneを開けば即座にわかるようになりました。
スモールスタートで定着した現場スタッフは、フェーズ2での拡張にも比較的スムーズに対応できました。「kintoneに入力する」という習慣がすでにあったからこそ、新しいアプリの追加も自然に受け入れられました。
フェーズ3:Googleドライブ連携——施工写真を現場と本部でリアルタイム共有
最終フェーズでは、施工写真の管理をGoogleドライブと連携させる設計を導入しました。
現場スタッフが施工中・施工後に撮影した写真をGoogleドライブの案件フォルダに保存すると、kintoneの案件レコードからそのフォルダに直接アクセスできる仕組みを構築しました。本部は現場に行かなくても、施工の進捗を写真でリアルタイムに確認できます。
以前は「現場の状況を確認するために電話する」「担当者が戻ってきてから写真を共有してもらう」という手順が必要でした。それが「kintoneの案件画面を開いて、Googleドライブのリンクをクリックするだけ」に変わりました。現場と本部の情報ギャップが、ほぼゼロになりました。
「施工写真がリアルタイムで見られるようになったのは想定以上に便利だった。現場監督が電話しなくても済むようになったし、お客様への報告もスムーズになった」
kintone導入で変わった「3つのこと」
1. 「あの情報どこにある?」がなくなった
旧システムとExcelに分散していた情報がkintoneに集約されたことで、案件に関する情報の在り処が明確になりました。「旧システムを見ればいいのか、Excelを見ればいいのか」という迷いがなくなり、確認作業にかかる時間が大幅に削減されました。
2. 属人化が解消され、引き継ぎが容易になった
担当者ごとにバラバラだった管理方法が、kintoneのアプリという共通の入力フォームで標準化されました。誰かが休んでも、担当者が変わっても、kintoneを開けばその案件の全情報が確認できます。「あの人しか知らない」という属人化のリスクが根本から解消されました。
3. 現場と本部の情報ギャップがリアルタイムで埋まるようになった
日報の入力・施工写真のGoogleドライブ連携により、現場の状況が本部にリアルタイムで届くようになりました。「現場が今どんな状態か」を把握するための電話・メール・帰社後の報告という手順が大幅に減り、本部スタッフも現場スタッフも、それぞれの本来の仕事に集中できるようになりました。
P担当者の場合、導入後こう変わった
段階的な導入が完了した後、P担当者はこう振り返ります。
「変化を受け入れる姿勢が必要だと実感した。最初からすべてうまくいく予定で考えない。少しずつ変えていけばいい——その気持ちで進めたから、ベテランも含めて全員がついてこられた」
この言葉は、導入の成功だけでなく、組織がDXを進める上での本質的な心構えを表しています。完璧なシステムを最初から求めるのではなく、「変化を受け入れながら育てていく」という姿勢こそが、現場への定着を生み出しました。
こんな外装・工事・建設業に特におすすめです
✔ 古い自社システムが今の業務に合わなくなり、Excelで補う運用が増えてきている
kintoneへの段階的移行で、旧システムとExcelの混在管理を解消できます。まず必要な部分だけを作って使い始め、業務の変化に合わせて育てていくアプローチが取れます。
✔ 担当者によって管理方法が違い、属人化した運用が会社全体に広がっている
kintoneのアプリという共通の入力フォームで管理を標準化することで、「誰がやっても同じ状態で情報が残る」仕組みが生まれます。属人化を解消し、引き継ぎの不安をなくすことができます。
✔ 施工写真が担当者のスマホやPCに散らばっており、本部からリアルタイムに確認できない
GoogleドライブとkintoneをSharedPointなどで連携することで、現場で撮影した写真を案件に紐づけてリアルタイムに共有できます。現場監督の電話報告が大幅に減ります。
✔ 新しいシステムを入れたいが、ベテランスタッフへの定着が不安で踏み出せない
スモールスタートで3本のシンプルなアプリから始めることで、ベテランスタッフへの定着ハードルを大幅に下げられます。「変化を少しずつ」が、組織全体の定着につながります。
✔ 原価管理・材料管理がExcelで属人化しており、案件ごとのコストがリアルタイムで把握できていない
原価管理アプリと案件アプリを連携させることで、案件ごとの原価がリアルタイムで集計されます。「この工事は今いくらかかっているか」が、いつでも確認できるようになります。
外装・工事業のkintone導入の流れ
STEP 1:ヒアリング(現行システムと業務フローの整理) 旧システムで管理している情報・Excelで補完している情報・現場での報告方法をお聞きします。「どこに何の情報があるか」を整理することが最初の重要な作業です。所要時間は2〜3時間程度。
STEP 2:スモールスタート設計(顧客・案件・日報の3本から始める) 最初に構築するのは3本のシンプルなアプリのみ。入力項目を必要最小限に絞り、ベテランスタッフでも使いやすい画面を設計します。「まずこれだけ」のハードルの低さが定着の鍵です。
STEP 3:運用開始・定着フォロー(現場の声を拾いながら改善) 本番運用を開始します。「ここが使いにくい」「この情報も必要」という現場の声を積極的に拾い、画面設計に反映します。完璧を求めず、使いながら育てる姿勢が大切です。
STEP 4:段階的拡張(原価管理・材料管理・外部連携) 基本3本が定着したタイミングで、原価管理・材料管理の追加とGoogleドライブ連携を順次導入します。現場の準備が整ったタイミングで拡張することが、無理のない成長につながります。
「最初からすべてうまくいく予定で考えない」——DX成功の本質
システム導入を検討する多くの会社が、「完璧なシステムを最初から作ろう」とします。すべての業務をカバーし、すべての担当者が満足し、すべての課題を解決するシステム——これを目指した瞬間に、プロジェクトは重くなります。
P担当者が導き出した答えはシンプルです。「変化を受け入れる姿勢が必要。最初からすべてうまくいく予定で考えない」——この心構えが、ベテランを含む全社への定着を実現しました。
kintoneはその哲学に最もフィットするツールです。小さく始めて、現場の声を聞きながら育てていく。Googleドライブとの連携も、原価管理の追加も、最初から計画していた必要はありません。「今の現場に何が必要か」を問い続けながら進化させていく——その柔軟さこそが、長期的な定着と成長を支えます。
まとめ
- 旧システムとExcelの混在管理が生む属人化・情報分散は、kintoneへの段階的移行で根本から解消できる
- スモールスタートで顧客・案件・日報の3本から始めることで、ベテランスタッフへの定着ハードルを大幅に下げられる
- 「まずこれだけ」の簡単な3本が定着してから拡張する戦略が、組織全体の無理のない変化を生む
- 原価管理・材料管理を案件アプリと連携させることで、リアルタイムで案件ごとのコストが把握できるようになる
- Googleドライブとkintoneを連携させることで、現場の施工写真が本部にリアルタイムで届き、情報ギャップがなくなる
- 「変化を受け入れる姿勢が必要。最初からすべてうまくいく予定で考えない」——この心構えがDX成功の本質
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